(闇うさぎ)
~第3章~
第85話:タイムスリップじゃ!
『手を離してたまるかよっ
これは、オレの種だから!!!』
桃の種にしがみつくと、
!! !!
種が浮き沈み
時折、ゴボゴボと何か言っているようだった。
ドアの外へ勢いよく流れ出る水圧で、オレは身動きが取れなかった。
!!!!!
#イデッ
#イデデデデッ
見えない壁と激しい水圧に体を押しつぶされ、
桃の種が腹をえぐり、背中に激痛が走った。
!! !! !!
いてぇ…
いてぇよ…
それでも、
オレは手を離さなかった。
・・・。
こいつさえいれば、また増やせるしっ!
水は流れ続け、少しずつ水かさが減っていった。
!!
足がつくようになると、桃の種が顔を出した。
『ご主人たま…大丈夫でとぅか?』
桃の種は体を揺すった。
!! !! !!
水をかき分け、オレはドアから離れた。
おめえよっ!
腹に当たって、痛えからっ!!!
!! !!
こん畜生めと、
オレも桃を揺すってやった。
水かさが、膝下くらいまで減った頃
桃の種がオレに言った。
『ご主人たまっ!
いまのうちに、心の畑を耕しちゃいまとぅ!』
#カチッ
エレベーターみたいな、ドアが閉まった。
水の流れが止まると、
種はオレから手を離し、水に浮いた。
そうか。
そういやあ、畑を耕すんだったわ。
!! !! !!
オレはかけあしで、地面を踏んだ。
地面はぬるりと固かった。
『もっと、波くだたい!』
桃の種はフワフワ浮いて、波を喜んだ。
オメエよぉ!
遊んでねえで手伝えよっ
全然、まだまだ硬えんだから!
桃の種は首を振った。
『浮いちゃうので、耕せまてん』
はっ?
おめえ、耕せねえのかよっ?!
まったく、しょうがねえなっ!
だったらよ!
オレが波をつくってやっから、
壁にあたまぶち当てて、
今のうちに種数、増やしておけや!
!! !! !!
オレは足を動かした。
桃の種は壁に当たると、スイ~っと戻ってきた。
??!
まったく、おめえはしょうがねえなっ
遊んでる場合じゃねえだろうよっ!
!! !! !!
オレは種を両手に抱え、
ゴンゴンと壁に打ち付けてやった。
しかしながら、
桃の種は割れなかった。
『水でふやけちゃったみたいでとぅ』
おめえはっ
何してくれてんのよ?!!!
まったく、しょうがねえな!!!
オレはスコップを持ち出し、桃の種を叩いてやった。
桃の種は水に沈み、
それからピョンと飛んだ。
桃の種は、声を出して笑った。
くそっ!
しょうがねえ…今はオレが耕すか
おめえっ、あとで手伝えよ!!
!! !! !!
オレは跳んで跳ねて、かけずりまわり…
!!
#イデデッ
スコップを何度も地面に刺した。
!! !! !! !!
!! !! !! !!
気がつくと、
いつの間にか水が抜けて、地面が見えていた。
おいっ、種!
どうよこれ?!!
もう、良いんじゃねえ?!!
地面が少しずつ、柔らかくなって
足で踏むと、ずぶりと足がめりこんだ。
『良い感じでとぅね』
種はお尻を地面に突っ込んだ。
よっしゃ!
それじゃあ、そろそろ
オメエ、種数増やしとけや!
オレがそう言った時だった…
地面から霧のように、白い蒸気が上がった。
?!!
なによこれ?!!
おいっ、種!どういうことだ?!!
霧が濃くなり、まわりが見えにくくなった。
種が言った。
『ご主人たまのこころの畑は…干上がるのが早いでとぅ。
硬くならないうちに
急いでボク、埋まらないと…』
『あああぅっ!!!』
!! !! !!
何やら鈍い音がして
『ご主人たま~…
ちゃんと…
水やり…
してくだたい…』
下の方から、声だけが聞こえた。