(闇うさぎ)~第3章~第37話:オレは、ノートを見せてやった。

短編つぶやき小説

(闇うさぎ)
~第3章~

37話:オレは、ノートを見せてやった。


 

オレは考えていた。

 

いぬの野郎、

思ったよりも

しっかりしてやがるじゃねえか…

 

そうさ…その通りっ!!!!

 

自分一匹で切り抜ける技を身につける…

それこそがっ

大人男うさぎのたしなみ!!!

 

たとえどんな状況であろうとも、

生きていくためには、

自分の身は、自分で守るしかねえっ!!!!

 

#ウムッ

 

こいつとは案外、

気が合うのかもしれねえな。

 

その点、

うさぎくんと言ったら…

 

まったく…

手がかかりすぎて、困っちまう!

 

あいつは、

危なっかしくてしょうがねえんだ。

何度、同じことを言ったって

すぐに、忘れちまうんだから…

 

オレだったらよ!

こんな簡単な願いごとっ

ちょちょいのちょいで

あっという間にできるのに!!!!!

 

#フゥ

#参っちまうぜ

 

オレはいったい

いつになったら過去に行けるんだ?!

 

??!

その時、うさぎくんの声が聞こえてきた。

 

『桃さん!ボクっ

キミと話しがしたいんだ!!!』

 

!!

ん??

 

『桃さん!!

ボクの言葉、分かりますか??』

 

『桃さん!お願いしますっ

キミを、食べさせてもらっても良いですか?!!!』

 

・・・。

まさかこいつ…冗談だろ??

 

#うさぎくんの顔は

#真剣だった

 

!!!!!

おめえよっ!

なんで桃に、話しかけてんだ?!!

 

『!!!

おじいさん!大変です!

桃さん、食べられたくないみたいで…

 

!!

ボク、無理矢理になんて…食べられません!!!!』

 

!!!

 

オレは、耳を疑った…

 

・・・。

こいつ、まさか

もう…桃と話せると思ってる???

 

!!!!!!!!

 

オレの頭に、ガーッと血がのぼった。

 

おめえ!バカか?!!

なんでもう、桃と話せると思ってる?

どこをどう間違えたら、そんなことになる訳よ!!!

 

願いごと、

おめえはまだ

なにひとつ終わってねえだろうよっ!!!!!

 

こんなに簡単な願いごとさえできねえなら、

おめえはもう、何にもできねえよっ

 

おめえに付き合って待ってやってる、

オレ達の迷惑も考えやがれっ!!!!!

 

修行はさっさと諦めて、

おめえは、

家に帰って料理でもしてりゃあ良いんだわ!!!

弱虫のおめえには、

そっちの方が向いているのだから!!!!!

 

・・・。

 

オレの言葉は、ひとつも口から出なかった。

 

クソじじいが言った。

 

『闇うさぎよ、そろそろ

おぬしの書いたノートの出番じゃ。

ほれ、出してみよ!』

 

!!!!!!!

 

クソじじいめっ!

偉そうにオレに命令しやがって!!!!

おめえ、何様のつもりだよっ

オレの自由を奪いやがって!!!

おめえは、フェアじゃねえんだよ!!!

フェアでもねえくせに、

チカラの差、見せつけやがって!!!!!

おめえなんか、

桃がなけりゃあ何にもできねえ!

他力本願の、ただのクソじじいじゃねえか!!!!!

 

!!!!

その時…オレの手足が動いた。

 

こころの中に、じじいの声が聞こえた。

 

『心配するな。

おぬしの声は、わしがちゃんと聞いておるじょ。

好きなだけ、わしに話せばよい。

 

おぬしも勘が良い男じゃな。

それに、正直で実によい。

的を得たクレームで、気持ちが良いくらいじゃ。

そうじゃ。

この修行は、まったくもって

おぬしにとってフェアじゃない。

じゃから、

怒りたくなるのも当然じゃ。

遠慮なく

わしに思ったことを言ってくるがよい。

おぬしは、早く過去に行きたい。

うさぎのやつも、気持ちは同じじゃ。

早く過去に行き、

親たちに会いたいと思っておる。

 

見てみよ!

あの真剣な顔を。

 

とにかく、今は

うさぎの練習中だからのう。

練習に集中させてやるのじゃ』

 

!!!!!!

オレだったら!

あんな簡単な願いごと!

すぐに出来るのに!!!!!

どうしてうさぎくんは、できねえんだ?!!

 

じじいは言った。

 

『それはのう。

うさぎは、おぬしではないからじゃ。

おぬしも、うさぎではないじゃろう?

 

おぬしができることを、

うさぎがすべて出来たなら、おぬしは嬉しいか?』

 

・・・。

 

オレは想像してみた。

 

オレができることを、

すべて出来ているうさぎくんを…

 

・・・。

オレは考えて、イラついた。

 

そんなうさぎくんだったら、

オレ達、ライバルになっちまう。

そうなったらオレは、

うさぎくんを超すために必死になって

こんなに仲良くはならなかったはずだ。

 

うさぎは、おぬしではない、か…

まあ確かに、

オレがうさぎくんだったら、イヤだもんな。

みっともない姿なんて…

オレ、絶対にみんなに見せたくねえしっ

すぐに忘れちまうなんて、

オレ、絶対にイヤだわ!!!

自分が許せなくなっちまう!!!

 

うさぎくんは、うさぎくん…

とは言え、

うさぎくんってば

それを気にしてねえってのも

ある意味、スゲエのかもしれねえな。

 

まああいつは、

なんにも悪気はなくて…

まわりに迷惑かけてるのも、

気が付いてねえだけかもしれねえが…

 

でもよ…

うさぎくんと一緒にいると、

オレ、安心することもあるんだわ。

なんでだ??

 

『そうじゃのう。

なんでじゃろうのう。

おぬしらは、

安心できるからこそ、友達になったんじゃろ?』

 

そうなのよ!

うさぎくんはなあ…

すっげえ、とぼけていやがるのよ!

だから、オレが説教してやっても

気にしねえっていうか、

響かねえっていうか、

あいつは、とぼけたまま忘れちまうんだな…

 

でよ!

言いすぎたって、オレもちょっと思うんだが

あいつ、気にしねえから!

ケンカしても、

またしばらくすると、

遊ぼうって!

あいつ、言いに来やがるんだ!

ほかの奴らは、みんなどっかにいなくなっちまうってのによ!

#まったく

#あいつは

#どんだけ忘れっぽいんだ

 

でも、

忘れっぽいから…

オレ達、仲良く出来たのかもしれねえな…

 

・・・。

 

!!

まったく…

しょうがねえな、うさぎくんは!

オレがいねえと、

願いごとひとつ、できねえんだからよっ

 

!!!

 

オレは、うさぎくんに

ノートを開いて見せてやった。

 


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