(闇うさぎ)
~第3章~
第36話:ウォウォン ウォ ウォン!!!
いぬの口のまわりが、
緑色にギラギラとテカっていた。
そしてこの、
モワ~ッと
強烈に鼻につく嫌な臭い…
!!
うさぎくん!
それは、いぬへのお仕置きか?!!
キミ!
桃を盗んだからと言って、
いぬには
さすがにそれはやりすぎだ!!
!!!
#ゴホッゴホッ
#ゴホッゲホッ
いぬは後ろ足で顔をかきむしり、
臭いの元を必死で取ろうとしていた。
!!!
まったく!しょうがねえなっ!
手のかかる奴ばっかりだぜ!!!!
一刻も早く、オレは過去に行きたいのによっ
これじゃあ、
願いごとしてる場合じゃねえし!!
でも、こりゃあ
どうにかしてやらんと
いぬの鼻がひんまがっちまう…
!!!!!
おい!じじい!!!
聞こえるか?!!
!!!!!
おい!じじい!!
オレのカラダ、動けるようにしてくれよ!
いぬの野郎を、さっさと洗ってやらねえといけねえだろう?!!
この辺、どこかに水場はあるか??
その時、
いぬが大声で吠えた。
『ウォウォン ウォ ウォン!!!』
?!!!!!
『ふぉっふぉっふぉ。
いぬのやつを見ておれ!これがやつの技じゃ』
?!!!
いぬは大きく、身震いをした。
!!
#冷たっ
オレの方に、水しぶきがたくさん飛んできた。
??!
いつの間にか、
いぬのカラダがビショビショに濡れていた…
!!
すげえっ
これは、全身から水を出せる技なのか??
水場に行かなくとも体を洗い流せるなんて…
なんて便利な技なんだっ!
#これなら面倒な
#風呂も必要ねえな
オレが感心して見ていると、
じじいがまた
オレのこころに話しかけた。
『ふぉっふぉっふぉ。
そんな技ではないじょ。
これは、時間を止める技じゃ。
時間を止めて、おぬしらが気が付かないうちに
水場に行って、石鹸で顔を洗い、走って戻って来よったわい。
いぬのやつは、
自分のために相手に時間を使わせるのが苦手でのう。
他者に負担をかかけぬように、
自分一匹で切り抜ける技を身につけたがる。
誰かを助けるのは得意なのじゃが、
どういう訳か、助けてもらうのは苦手での。
せっかく闇うさぎが、
助けてやろうと思っておったのにのう』
・・・。
オレはいぬの気持ちが、
ほんの少しだけ分かる気がした。