(うさぎ)
~第3章~
第46話:オレの本気を見せてやる。
『おぬしと一緒に住んだら、楽しそうじゃのう』
おじいさんは、笑っていた。
!!
ホントですね、おじいさん。
ボクも笑った。
すっかり慣れた1匹暮らしだったけど、
やっぱり1匹は、寂しい時も多かった。
おじいさんも、きっとそうなんだろうな…
玄関を開ける音が聞こえたら
おかえりって、言ってみたり。
おはようや、いただきます、いってらっしゃい
本当にそんなのただの挨拶なんだけど
返事が返ってくるってすごいことなんだよな…
ボク1匹だけじゃ、自分の声を聞くしかないもの。
ボクはおじいさんと話せて、楽しかった。
『わしはのう…
コーヒーを淹れるのだけは、得意なんじゃ』
そう言うと
おじいさんはお湯を沸かして、ボクにコーヒーを淹れてくれた。
『前にばあさんが、
わしのコーヒーを美味いと言ってくれてのう…
それからわしは
いつも、コーヒー担当なんじゃ』
!!
うん!
おじいさんのコーヒー、美味しいですね!
ボクはうなずいた。
桃飴と一緒にコーヒーを飲みながら
ボクはおじいさんと、桃について話しをした。
わしはのう、もうこの桃を何個食べたか分からんぞい。
もっと若い頃は、週に1個は食べておった。
1000…!
いや!2000?!
いやいや、もっと食べたかもしれん。
えー…わしが今、75…いや!76だったかのう?
いやいや!77だったか…
で、えー…
初めて桃を食べたのが、あれはいつじゃったか
んー…
ん?
わしは、何年間食べ続けとるのじゃ??』
???
ボクには、まったく想像もつかなかった。
でも、ボクは嬉しかった。
何でもできる、おじいさんなのに
忘れることもあるんだな。
ボクも、いっつも
なんでもすぐに忘れちゃうんです。
でも、料理のことなら
ちゃんと思えてるんですよ、不思議でしょ?!
おじいさん、おじいさん!
ボク、桃に願い事するのが間に合わないから
桃を塩水につけながら食べるのってどうなんですか?
そしたら、ゆっくり食べても大丈夫じゃないのかなあ??
おじいさんは笑った。
『わしゃあ、そんなこと
やったこともなかったが
何でもやって、試してみるのは良い事じゃ。
なんてったってこの桃は、
いくらでもやり直しがきくのじゃからのう。
うさぎよ。
思いたったが吉日で、
さっそく、試してみたらどうじゃ?』