(うさぎ)
~第3章~
第43話:ボクは考えるのをやめた。
『うさぎよ。
わしが言っておる意味が分かるか?』
ボクにはおじいさんの言っている意味が、
なんとなく分かった。
でもボクには、
おじいさんの気持ちが、うまく飲み込めなかった。
そうか、
過去で会えても
また会えなくなっちゃうのか。
お別れは、辛いだろうな…
ボクは、家族が死んだ日のことを思い出そうとした。
でも、正直
ボクは当時のことをあまり思い出せない。
とにかく、
みんなが帰ってこない日が続いたんだ。
空を見て、かあさん達に話しかけて
そして、目の前のやれることを
一生懸命やってたら、今になった。
でも、おじいさんは過去に行けるんだもの。
会いたくても会えないより、
会いたい時に、
会いに行ける方が良いんじゃないのかな?
違うのかなあ?
ボク、かあさんに会えるなら
やっぱり会いたいよ…
かあさんに会ってみて、
その時になってみないと
自分がどんな気持ちになるのか分からないな。
ボクは考えるのをやめた。
考えても、分からないこともある。
今まで、そんなことばかりだった。
手を動かすと、
ボクはなぜか、いつも気分が晴れた。
ボクは、手を動かすことにした。
おじいさん!
冷蔵庫を開けても良いですか?
ボク、料理したくなっちゃいました。
!!!
冷蔵庫を開けると、
桃と、牛乳パックが目に入った。
おじいさん!
牛乳を、使わせてもらって良いですか?
!!
おじいさんは、頷いた。
うん!
賞味期限も大丈夫!!
おじいさん!
塩と砂糖はありますか??
!!
おじいさんは、引き出しを指さした。
『そこに入っておるじょ』
引き出しを開けると、
可愛らしい容器が2つ並んでいた。
!! !!
ボクは容器のフタを開け、
指でつまんで味をみた。
#うん
#こっちが塩で
#こっちが砂糖だな
#ピョンコピョンコ
それからボクは、
自分のリュックの中を見た。
!!!
ボク、
食べ物、いっぱい持ってきたんだ。
何が残ってたかなあ…
#ガサガサ
!!
良かった!
みかんが入ってた!
#ガサガサ
バナナもあと2本、残ってる!
!!
あと、
みそパンもまだあるぞ!
クッキーと、かりんとうと…
アーモンドチョコレートもあるな!
うん!
なんか、作れそうだ!
おじいさん!
包丁とか、お鍋とか、
料理の道具をお借りしても良いですか?
おじいさんは、うなずいて
流しと、ガス台の下の開き戸を開けてくれた。
『ばあさんのものが、色々あるはずじゃ。
わしは、何も触っておらぬがのう』
!!
包丁、まな板、ざる、ボール、
小鍋、大鍋、フライパン…
中華鍋も、丁寧に手入れがされていた。
粉物も置いてあったけど、賞味期限が切れていた。
おじいさん!
じゃあ、包丁とまな板、お鍋、あとボールをお借りします。
ボクはペコリとひとつお辞儀をして、
包丁をにぎった。
大きな桃の皮を剥き、
小さく切り分けて、塩水につけた。
桃ジャムだったら、長持ちするもの!
パンに塗ったり、
ヨーグルトに入れるだけで美味しく食べられちゃう。
レモンの代わりにみかんを絞って
桃と砂糖・水を加え、
お鍋で桃ジャムを煮込んだ。
煮込んでいる間に、
切り分けた桃をスプーンで
ギュッギュッとつぶし、
砂糖と牛乳を加えて
引き出しに入っていた泡立て器で、
グルグル グルグルかき混ぜた。
#美味しくな〜れ
#美味しくな〜れっ
#フゥ
#これで美味しくなった
そして、冷凍庫に入れた。
桃のミルクシャーベット、美味しいんだよな!
ボク、甘いもの食べるとホッとするんだ。
疲れた時、すぐに食べられるし!
それから、
小さく切った桃に
おじいさんが出してくれた、爪楊枝を指した。
砂糖と水をフライパンに入れて、
べっこう飴を作り、桃にからめて桃飴をつくった。
そして、桃飴を冷蔵庫にしまった。
#うーん
#あとは何を作ろうかな
#ワクワク
桃のシャーベットができたら!
あとで、パフェも作っちゃおうかっ!!!
桃のミルクシャーベットの上に、桃ジャムをちょっぴりかけて!
その上に、カットフルーツを乗せて!!
アーモンドチョコレートとかりんとうを砕いて、パラパラってするんだ!!!
??!!!
これに、みそパンって合うかな?!
・・・。
#これはちょっと
#冒険だなっ
!!!!
ああっ
生クリームがあったら、もっと美味しくなるのに!!!
!!!!!
#うんっ
今度来るときは、お家から持ってくればいいね
!!!!!!!
#あっ
#そろそろ
#ミルクシャーベットをかき混ぜないとっ
#ピョンコピョンコ
おじいさんはテーブルのイスに座り、
ボクを静かに見つめていた。