(うさぎ)
~第3章~
第7話:桃のチカラ。
おじいさんは、立ち話をはじめた。
『この桃は、特別な桃でな…
不思議な能力を持っておる。
強く願いながら桃を食べれば、
願いが一つだけ叶えられる。
いやいや…
何でも叶えられる訳ではない。
自分のカラダの中身…
体質や能力といった部分を、
1つの桃で1つだけ変えられる。
この桃は先祖代々
病気を治したい人間のために、
大切に守り育てられてきたのじゃ。
しかしながら、
人間は貪欲な生き物でな。
力を強くしたい…
足を長くしたい…など、
人間の欲望はエスカレートしていくばかり。
桃を欲しがる人間が増え…
そのうち、争いの種になった。
そんな訳で
わしは森の中で
一人、動物たちと暮らしておる。
人間とくらべて、
動物たちは純粋じゃからのう。
昔はもっとたくさん
桃が取れたのじゃが…
年々、減ってきておる。
最近はとくに不作での…
わしも良い歳じゃから
そろそろ引退して、
弟子たちに
まかせられると良いのじゃが…フウ』
『おじいさんも、
桃を食べたのですか?』
ボクが聞くと、
おじいさんは
優しい顔で笑った。
『ふぉっふぉっふぉ。
そうじゃ、いくつも食べておる。
甘くて、とても美味しい桃なのじゃ。
それに、
たくさん実ると、
捨てるのはもったいないじゃろう。
じゃから、ついつい食べてしまってのう…
じゃが、
食べれば食べるほど、
前の願いごとの効果は薄れていく。
少しずつ、少しずつ、
元の自分に戻っていき、
気がついた時には消えていた、
な~んてこともしょっちゅうじゃ。
たまに、
全然、桃の効果が
効かんやつもおってのう。
ふぉっふぉっふぉっ
ありゃあ、なんでじゃろうのう』