(うさぎ)
~第3章~
第26話:ボクは、絵本を開かなくなった。
すごいよ、かあさん!
ボク…
忘れずに、思い出せたよ!!!
もう、
とっくのとうに
忘れたと思っていたのに…
ボクは、とても嬉しくなった。
それから、
ボクは、少しずつ思い出したんだ。
そうだ…!
ボクは毎日、
かあさんと一緒の布団に入り、
かあさんに
ぴったりとくっついて、
絵本の世界に
連れていってもらったっけ…
眠る前の、
かあさんの温かい手の温もり…
『楽しい夢を、見れますように』
かあさんが、ボクの頭をなでてくれた。
あの頃は、
ボク、
なにも恐くなかったんだ。
かあさんの温もりが
いつでも
そばにあって、
ボクを守ってくれる…
そう、
信じていたから。
でも、
みんな…
いなくなっちゃったんだよな。
とうさんも、かあさんも、兄弟達も
ボクの目の前から、
急に消えて、なくなった。
別れは、突然にやってきて…
目の前の世界が、急に変わった。
なのに、
不思議なんだ。
朝日は昇って、また沈む。
ボクの世界は変わるのに、
みんなの世界は変わらないんだ。
大好きだった絵本なのに
ボクは、
一匹で読むのがこわくなって…
それから
絵本を、開かなくなった。
あの絵本、
なんて名前だったっけ??
とっても、
面白かったのになあ…