(闇うさぎ)
第2.2章 時空のゆがみ ~うさぎたちの日記(春)~
《闇うさぎ・朝のあいさつ》4月6日
おす! 元気か!
やべえぞ…
そういやあ、オレたち
花見の日にちも
まだ決めてねえじゃねえか!
日時が決まらねえと…誰も誘えねえぜ?
勧誘用のチラシも印刷できねえ!
大至急…決めねえと!!!
1週間以上もある
喫茶店の春休み中に
オレはマスターに会いにいった。
#ドンドン
#ドンドンドン
店のドアをたたいたが
物音一つしない…
くそっ…留守か??
その時、
後ろから声がした。
『休みの日は、
マスターはぜったい出てこねえぞ』
振り向くと、
パンダが岩かげに転がり
くちゃくちゃと、笹を食べていた…
『オレ、休みの日に何度も試したが
一度も出てきたためしがねえ。
ハチに刺された時も
足を挫いた時も
どしゃぶりの雷雨に襲われた時も…
とにかくいっさい、
オレが呼んでも
マスターは出てこなかった』
!!
そんなバカな…!
たまたま、留守だったんじゃねえのか?
パンダは首を振った。
『窓から見てるんだ。
前に、目が合ったから分かる。
マスターはなあ…
めんどくせえことが、嫌いなんだ』
#ははは
#おめえと同じだな
オレが笑うと、
パンダはオレをにらんだ。
『うるせえ!おなじじゃねえよ!!
で、おめえ、なんの用だ?』
オレが事情を話すと、
パンダはうなずいた。
『花見の日にちは、重要だな。
協力してやっても良いぜ』
#マスター
#おびき寄せ作戦だ
パンダは言った。
『オレの長い経験から言えることは…
マスターは女に弱い。
女の動物がテラスにいる時は、
呼ばれなくても出てきてた』
!!!
それなら…
こんな作戦はどうだ!!
録音帽子に前に吹きこんであった
おかあちゃまの音声を
大音量でかけたら…
声に誘われて、
外に出てくるんじゃねえか?!!
しっかり出てきたところを
マスターが逃げないように
オレがドア前でふさぐから!!
パンダ! おめえは女役だ!!
顔が見えねえように岩かげで
シルエットだけ、さらせ!
いくぜっ
オレは、録音帽子を再生した。
・・・。
!!
#出てきた
!!!
#なにゲロッ
#今日は休みゲロゲッ
#ぴょんこぴょんこ
!!!
逃げようとしたマスターに、
パンダが笑顔で言った。
『せっかくの出会いの機会…
女性を、誘い損ねてしまうと残念です。
あとは
お花見の日時さえ決めてしまえば、もう大丈夫!
我々が知ってる連絡先を
力をあわせて持ちよれば、
コアラの電話番号や
みんなの電話番号も分かります。
マスター!
お花見に女性を誘えるように、
一緒に電話の協力
お願いできますか?』
!!!
#ゲロゲロゲッ
#コクコク
マスターは、力強くうなずいた。