(闇うさぎ)
第2.2章 時空のゆがみ ~うさぎたちの日記(春)~
《闇うさぎ・朝のあいさつ》3月1日
おす! 元気か!
金曜日の夕方、
オレはパンダと
週末に会う約束をした。
約束の時間に
喫茶店のテラスに行くと
パンダは勢いよく転がってきた。
『おめえも、
やれば出来るじゃねえか。
うさぽん、喜んでただろ?』
パンダは、さりげなく
オレの腹毛をむしった。
!!!
良い度胸だ!!
鍛えあげた、この肉体…
そう簡単に
オレの腹毛は抜けねえぜ。
オレは腹筋に力をいれた。
#ぐぐぐ
どうよ、抜けねえだろ?
おまえの力じゃ無理だ…
腹に力をいれ続けていると
パンダが笑って言った。
『やぎ婆さんの占いは
すげえ当たるって、評判らしいぜ』
!!
!!!
!!!!
オレが驚いている隙を狙って
パンダが、
オレの腹毛を引き抜いた。
!!!
おまえ、ウソついて
オレを動揺させるとは、
なんて汚ねえ手を…!!!
『ウソじゃねえさ。
やぎ婆さんの占いは、有名だぜ。
おめえの母ちゃんでも、
知ってんじゃねえか??』
!!!
オレは、血の気が引いた。
『顔が不吉…』
やぎ婆さんに言われた言葉が、
呪いのように
頭の中でぐるぐると回った。
!!
!!!
!!!!
パンダは、
調子に乗って
オレの腹毛をむしり続けた。
それから、
落ち着いた声で言った。
『っていうのは、冗談だ。
やぎ婆さんのことは、オレもよく知らねえ』
!!!
こ、こいつ…
なめやがって…
恐ろしいパンダだな。
パンダはおどけた顔をした。
『おめえ、やぎ婆さんに
何言われたんだよ。
オレのも聞いたんだから、
おめえのも、教えろよ』
パンダは真顔で、
オレの腹毛を引き抜いた。
!!!
#ふぅぅっ
パンダは、
オレの腹毛をおどけた顔で
吹きとばし、
にんまりと笑った。
『オレ達、友達だろ?』
こいつは…
敵か味方か…どっちだ?!!
オレは、急に分からなくなった。
こいつは、もしかして
危険なのかもしれん…
開きかけていた心のドアが
急激に、
音をたてて閉じていった。