(闇うさぎ)
第2.2章 時空のゆがみ ~うさぎたちの日記(冬)~
《闇うさぎ・朝のあいさつ》2月1日
おす! 元気か!
おかあちゃまが、オレに
手作りハチマキを作ってくれた。
オレの頭に
『カラオケ先生🎤』の文字で、
金色の刺繍糸が光り輝いている。
おとうちゃま、おかあちゃまが
どうやら今日は
抜き打ちで視察に来るらしい…
なんとしても今日は、
気合を入れて接客せねば!!!
自転車カゴに
大量のチラシを詰め込み、
猛ダッシュで配りながら
喫茶店に到着した。
オレは急いで店に入り、
カラオケ機材の調整をした。
音量、エコー、ともに問題なし!
念のため、一曲歌っておくか。
やっぱり、オレといえば…
恋愛ソングだろう!!
みんな、こっち見てるぜ
オレ、人気者だな!!
オレはギターをかき鳴らした。
#聞いてください
#わんにゃんソング
♪〜
ワンワンない~
にゃんにゃんない~
!! !!
ぶぅぶぅない~
ちゅうちゅうない~
!! !!
浮かれ騒ぎ 声尽きるまで
キミに鳴き続けた
フラレ騒ぎ 喉枯れるほど
オレは吠え尽した
想いはもう届かない
キミはもうここにない
#イェァ
#どうよこれ
#ブチッ
歌の途中なのに、
急にマイクがきかなくなった。
今、一番良いところだったのに…!!
機材を見ると、
パンダがマイクを引き抜き、
首を振っていた。
オメエ…何すんだよ!!!
オレはパンダをどつき倒し、
パンダの顔の上に座って、
アカペラで歌い続けた。
!!!
うさぎくんに、
オレは口をふさがれた。
マスターが
うさぎくんの隣で
トランプを握りしめて、泣いている。
う…うさぎくん…
キミまでどうして…??
オレは急に悲しくなった。
キミは…
オレの味方はしてくれないのか??
オレは、
ただ歌ってただけなのに…
・・・。
みんな、黙ったままだった。
#ああ分かったよ
#みんな
#オレがキライなんだな
オレは、頭にきて
悲しくて…
でも、
オレの居場所はここだけで…
みんなの視線が苦しくて。
この場所でオレ、
頑張ろうと思ってんのに…
でも、
みんなに嫌われてるのは
そんなの…
一番最初から
分かってたじゃねーか!!
オレ、何悲しんでんだ?!
#ハハハ
オレはカウンターの下で
ギターを静かに弾いた。