(うさぎ)
第2.2章 時空のゆがみ ~うさぎたちの日記(春)~
《うさぎ・朝のあいさつ》3月17日
おはよう。
昨日の仕事帰り、
パンダがテラスで1匹、
空を見上げて
寝転がっていた。
『今日はお疲れさま』
ボクが声をかけると、
パンダは起き上がって笑った。
キミ、すごい早く転がれるんだね。
ボクびっくりしちゃった。
パンダは、照れ臭そうに笑った。
#そうでもねえよ
ボクね、
がんばった自分へのご褒美に
今日は温泉に寄って帰ろうと思って!
ほら、この近くに
洞窟温泉があるだろ。
そこから眺めるお月様が、
キレイなんだよ〜。
そうだ!!
良かったら、
キミも一緒に行かない?
キミも今日は
すごい頑張って汗かいたから、
流して帰ると気持ちいいよ。
『温泉?
この近くにあるのか?
オレ、温泉なんて
行ったことねえし…』
パンダは
はにかんで笑った。
!!
そうなの?
だったら一緒にいこうよ。
ボク、
いっつも1匹で行くんだけど
誰かと一緒に
温泉入ってみたかったんだ!
ここの温泉大好きすぎて
回数券持ってるの!!
#いっぱいあるから
#一枚あげるよ
ボクが回数券を見せると、
パンダは券を
まじまじと見て、
恥ずかしそうに言った。
『オレ、温泉の入り方も
分からねえから…』
!!
心配いらないよ。
すごい簡単!
一緒に入れば大丈夫だよ!!
服をぬいで
体の汚れを落としてから
入るだけさ。
温泉でパンダは
キョロキョロしていたが、
しだいに慣れてきた。
洞窟の暗闇の中、
感じるのは月明かりと、
お湯の流れる音だけ。
『うさぽん…ここは…
しゃべってもいいのか…』
#パンダが
#小声で聞いてきた
大丈夫だよ!!
そう答えるとパンダは、
小さい声で話しはじめた。
『こんな、でけえ風呂…
オレ、初めてだわ…
オレん家、家族多くてよ…
風呂なんか…
急いで入んなきゃならんし…
気持ちいいな…』
!!
そうなんだね!
キミは家族が多いのか。
ボクなんか、1匹暮らしで…
寂しいもんだよ。
賑やかで楽しそうだね!!
#いいなぁ
ボクがそう言うと、
パンダは小さな声で言った。
『うさぽんは、1匹暮らしか…
いいなあ…1匹暮らし…
うちは…
家族は多いが…
毎日が…
葬式みたいだぜ…』
えっ…葬式??!
『きもちいいな…
ここは…
泳いでもいいか…?』
ボクの返事と同時に
パンダはお湯にもぐった。